「ねぇねぇ凪〜」
「………」
「ねねねぇ凪〜」
「…………」
「無視すんなってば」
ぐさ。
「痛いっ!刺さった!?なんか刺さったよ!?」
「気にするな」
でもジンジンするんですけど…。
「それよりスイカが食べたい」
「はぁ?スイカ?」
「うむ、未来のスイカは高くて買えないの」
未来では果物の値段が高騰しているらしい。
「スイカが食いたいの?」
「うんうん!」
「でも買わないよ」
「え〜」
ぐさ。
「痛いっ!だからさっきから僕に何を刺してるの!?」
「だってー、スイカが食べたいよ〜」
「別に食べさせないって言ってるんじゃないの」
「じゃあ何なの?」
「僕のおばあちゃんから毎年届くの、だから買わずしてスイカが食べられると言うわけ」
「ほうほう、じゃあそれまで待てって事?」
「そう」
ごろん、と床に寝転がる。
「いーやーだーっ、今食べたいーっ!」
「そんな事言ったって……」
ぴんぽーん。
『宅配便でーす』
「スイカだっ!!」
「違うだろうに…」
ピカリちゃんは印鑑を持って玄関に走っていく。
程なくしてデカイ箱を抱えてもって来る。
「スイカだよ!」
「まさかぁ、そんな……」
勝手にピカリちゃんがあけると中には緑と黒で立てに縞々な中身が赤い食べ物が入って居た。
「タイミング良いね、すぐ食べようね」
「……なんでこんな時ばっかりタイミング良いかなぁ…」
あと、人んちのものを勝手に自分のものみたいにしないでほしいなぁ…。
「スイカ割りやろうスイカ割り!」
「家の中で!?」
いそいそと準備。
目隠しして、日本刀装備。
自分で回ってスイカ割り開始!
「危ない!刀とか危ないよっ!!」
僕の声などお構いなしでふらふら歩き始める。
「…………ここかっ!」
すぱーんっ!
「あああああああああああぁぁぁぁああ!!」
「どう?割れた?……あぁー、割れなかったぁ」
「何でスイカは無傷でテーブルが真っ二つなの!?」
「じゃあ、もう一回……」
「危ないから危ないから!せめてただの木の棒でやって!」
「むう、しょうがないなぁ…」
目隠しをして、木の棒を装備。
「じゃあ、回して」
「……」
「ぐるぐるぐるぐる〜」
回転ストップ。
「さあって、どこかな〜」
「………」
まあ、スイカ食べれば大人しくなるでしょう。
「ここだぁっ!!」
「ゴヴァッ!?」
「うわ、このスイカ硬い!?」
僕の頭はスイカじゃありません……。
目隠しを取り、今しがたぶん殴ったものを確認。
「あぁ!?大丈夫、凪くん!」
「ああああぁ、綺麗な花畑に川が見えるよ〜」
「逝っちゃ駄目だよ〜!」
ぐさぐさぐさぐさ。
「いたたたたたたた、痛いよ!」
「よかった、起きた」
「よくないよ!もうちょっとであの世行きだったよ!?」
「仕方ない…目隠しなしでやるか…」
まだやるのか……。
「よーく狙って〜…」
木の棒を背中のほうまで振りかぶる。
「……せいやっ!」
そして、勢い良くスイカ目掛けて振り下ろす。
ドグッシャーーッ!!
「うわっ!?」
スイカ粉砕。
赤い中身は返り血のように壁にベトベトと張り付く。
棒が振り下ろされた地点には皮の一部と、赤い汁だけがわずかに残った。
「って、たべる所なくなっちゃったよ!?」
「あれ?おっかしいなぁ…」
「おかしいのはピカリちゃんだよ!」
ピカリちゃんも僕も、スイカの返り血を浴びてベットベト。
「あ〜あ、一個無くなっちゃったよ……」
スイカのすぐ近くに居たピカリちゃんの被害はかなりのもの。
僕の頭があれじゃなくて良かった……。
「…お風呂を貸してもらいます」
「どうぞ」
風呂場に駆け足。
僕も着替えをする。


「ふー」
体をほこほこさせてピカリちゃんが現れた。
「いい湯だったよ〜」
「そうかい……はいこれ」
「ぅわお、スイカ!」
「お好みで塩もどうぞ」
漫画でよく見る半分に割られたスイカをピカリちゃんに渡す。
「わーい、いただきまーす」
シャクシャクと良い音が聞こえる。
「じゃあ、ぼくも」
見える種をスプーンで全部穿ってからたべる。
「ごちそうさまー!」
「早いよ!?口の周りベタベタじゃん!」
「おっといけね、つい夢中になっちゃったよ」
タオルで拭き取る。
「じゃあ、後半分もらうね」
「そんなに食べるの!?」
「え?だめ?」
「僕も食べたいし、少しは遠慮するものでしょ」
「まだあと二個もあるから良いじゃない」
「良くないよ!ああ、もう食べ始めてるし!?」

未来人と僕こと凪の休日でした。


つづくよ