「…や、すっかり遅くなっちゃったな」
ちょっと面白いことがあって時間を忘れるとすぐこれである。
24時間なんて短すぎると思う。
よほど月が明るく無い限り真っ暗なので慎重に…。
バサバサバサバサッ!
「わひっ!?」
………ビックリした。
「…鳥目のくせに夜に飛ぶなよ、ビックリするじゃないか」
こう、半端に暗いのになれると先が見えそうで見えなくてとてもいやな感じ。
懐中電灯もペンライト程度のしかもって無いし。
「お〜い、なんか居るんだったら先に出てきて〜……」
…………………………よしいない。
や、居るかもしれないけど!
リュックを背負いなおしてまた歩き出す。
「………しかし、木ばっかりで空も見えないな。晴れてたら星が綺麗だろうに」
上を見上げる。
背の高い木の枝が空を覆い隠している。
「………」
只今無風。
ざわざわと木の葉が吹かれる音もしなく、ただ自分の足音だけが聞こえる。
………視線を感じる。
「……やだなぁ…気になるなぁ…気のせいかなぁ…」
後ろを振り向いたり、上を見て見たり、周りをキョロキョロしてみたり。
「………誰か居るんですか〜?」
…………。
「俺の気のせいじゃなかったら出てきて〜、何もしてこない方が怖いから〜」
…………。
「…………」
やっぱり気のせいか?
気にしないで歩き出そうとしたとき…。
「はははー、よく気がついたな!」
突然響く声。
凄いビックリして辺りを見回す。
「だが!私に目を付けられたら簡単には逃げられない!」
「………」
何処からか響いてくる声はよく聞けば可愛くて、緊張が少しだけ解ける。
「くらえ!」
「ん!?」
周囲が段々と暗くなっていき、周りが見えなくなる。
「あぁ、周りが真っ暗に!」
「見たか、私の力!」
「何のこれしき!」
ナイトスコープ装備。
「これでバッチリ!…ん?」
数メートル先に人影発見。
「犯人はお前だな!?」
「なに!?見えるの!?」
「これのおかげさ!わずかな光を増幅して暗いところでも見えるようになるんだぞ!」
「え!?ずるいじゃん!それじゃ私の能力意味無いじゃん!」
「はははー、俺のほうが上手だったな!」
「何でそんな物持ってんのよ!」
「今日はサバゲー装備なのでしたー」
「むむむ!じゃあこれならどうだ!」
上へと飛んでいく。
「ずるい!俺は飛べないぞ!」
「そんなの知らないわよ!」
人影の周りに球体発生。
「いきなり弾幕ごっこ!?」
緑色の弾回避!
「撃ってくるなら撃ち返すよ!?」
「やってみろ!」
多連装マガジン改造P90装備!
ぱたらららららららららららららららららら。
「いたたたたたたたっ!」
「よし!」
「よし、じゃない!」
怒って近づいてきた。
「弾が小さくて早いうえに避ける隙間も無いじゃない!」
「そんな事言ってもなぁ…」
これしか持って無いし。
「良いから大人しく食べれなさい」
「女の子なのに食べるだなんて下品!」
「そっちじゃないわよバカ!」
「…妖怪だから人を襲うのはわかるけどさぁ」
「やっと分かったの?」
いただきます、と手を合わせる。
「紫さんに言いつけるぞー」
「な!?何でここでその名前が出てくるのよ!普通霊夢とか魔理沙とかじゃないの!?」
「いや、なんとなく」
泊めてもらったりもしたのだ、友達だから呼んだら来てくれるに違いない。
「わざわざ暗くしたりして襲わなくても良いんじゃないの?」
「そういう能力だから良いの」
「可愛いんだから男だとコロッとついてくるんじゃなの?」
「…………可愛い?」
「かわいいよ」
カッ!と赤くなる。
「わ、な…え?」
「だから、かわいいよ」
「………か、かわいい…?」
なんだか狼狽している。
このまま褒めちぎればもしかして帰れるかな?
「人の好みにもよるけどさ、俺としては結構…いや、かなり良いよ」
「………」
「………おーい?」
ナイトスコープのままで顔を覗き込む。
「……あなた、帰りの途中なの?」
「うん」
「な…なら、案内してあげても、良いわよ……」
おっしゃ!
「じゃあお願いします」
かわいいのは事実。
二人きりでふもとまで帰れる!
「…かわいいっていわれるの、慣れてないの?」
「うん、まあ。幻想郷って、女の子ばっかりだし」
ははぁん、なるほど。
「…その能力って、昼間にあまり役に立たないね」
「……そうなのよ」
あらあら、うなだれちゃった。
「でもほら、夜に使える能力だなんてすてきだよ」
「……そう?」
「うんうん」
悪戯にもってこいだ。
話しをしてたらすぐに着いた。
「……あのさ」
「ん?」
「またくるの?」
「くるよ」
「…そう……じゃあ、また合うかもね」
「だね」
「……じゃ」
「うん、ありがとう」
軽く手を振ると飛んで行ってしまった。
「………あ、名前聞くの忘れてた」
…ま、また会うみたいだしいっか。


END