四つ目

「にいちゃーん」
「……ん〜?」
「どっかいこうよ〜、遊びに行こうよ〜」
「ん〜……そのうちなー」
「……もう、にいちゃん!」
「暇なのはわかるけどしょうがないだろ?外は雨なんだから」
窓の外は大雨、風で傘も壊れそうだ。
「俺、車とか無いしな」
なので雨の日は家でゴロゴロ。
「む〜〜」
「……ゲームでもするか?」
「……うん」
なんとなく不機嫌な声での返事。
最近ミミとやっているのはパーツを自由に組み合わせて機体を作り戦うというメカアクションゲーム。
ミミはやり始めたばかりというのもあって、毎回手加減されて負ける。
「今日は手加減なしね」
「ん?自信あり?」
「違う。手加減されて負けるの悔しいから」
「なら、負けても不機嫌にならない?」
「………わかんない」
「まぁ…たまにはいいか」
本気でやると数十秒で戦闘終了。
「…………」
「……ふう、うぅ…」
表情がだんだん沈んでいく。
「まぁ、あれだ……まだ始めたばかりだから仕方ないよ」
「…………」
「…………」
「……練習する」
そういって一人で始める。
……ゴロゴロ……
「…雷も鳴ってきたな…」
雨はさっきよりもさらに激しくなってきている。
「…うっ……く…この………」
今は集中しているせいか、雷に反応しない。
いつもならタックル並みのスピードで抱きついてきたりするのだが…。
「……ちょっと寂しいかな?」
しばらく雨音を聞きながら窓の外を眺める。
「………お」
窓の外が強く光る。
「今のは………」
ブツッ
「わっ……」
停電
「……停電だぁ」
「……停電だ」
「………」
「………」
ゴゴオォンッ!
「ひっ!?」
バッ、と胸めがけて飛んでくる。
「っとと」
よほどビックリしたのか背中に回された腕に力が入っている。
「んん〜〜〜〜」
体が小刻みにふるふる震えている。
「………………」
音を発するものがなくなり、雨の音が大きく聞こえる。
「………………」
なんとなく、頭を撫でてやる。
「ふひぇ!?」
ちょっと間抜けな声がした。
「な、なに?」
「いや・・・最近撫でてやったりしてなかったな・・・って思って」
「そお?」
しばらく撫でてやると震えが収まってきた。
「………にいちゃん?」
「どうした?」
「あのね……えっとね?」
「ん?」
「…………やっぱ、何でもない」
「なんだよ」
はにかむように笑って、またシャツに顔をうずめる。
「……………」
「…………雷、止んだな」
「………うん」
今、聞こえるのは屋根を叩く雨の音だけ。
「……ちょっといいか?」
「うん?」
あぐらに座りなおし、その上に座らせる。
「……………」
「……………」
「……………」
うつら、うつら、と頭が揺れ始める。
「ねむいのか?」
「………うん…」
抱き寄せて、自分に寄りかからせる。
「寝てもいいよ」
「…いいの?」
「うん・・・・・・おやすみ」
また、優しく撫でる。
「……………」
「……………」
時間が、いつもよりゆっくり進んでいるように感じる。
「……………」
電気はまだ戻らず、部屋の中は薄暗い。
「……………」
目を閉じ、腕の中の温かさと、息遣いだけを感じる。
「……………」
こうやって、誰かをゆっくり感じたのはいつ以来だろう。
「……………」
後どのくらいこうしているのだろう。
「……………」
たぶんお腹がすいたら起きるかな。
「…せっかくの休みだし、俺も寝るか」