ネコの3つめ

「そう言えばにいちゃん。」
「なんだ?」
「私って捨て猫だったんだよね。」
「あー。そう言えばそうだったっけな。」
「ノラだったころはまだ小さくて大変だったな〜。」
眼をつむり、思い出す。
「ほかのネコの縄張りに入って追っかけられて、ご飯もあんまり食べれなくて、決まった寝床も無かったし。」
「大変だったんだな。」
「うん。」
「俺が拾ったときのことも覚えてるか?」
「ちゃーんと覚えてるよ。」


(ああぁ〜、お腹空いたな〜。)
空腹であまり元気が出ず、とぼとぼ歩く。
ここ何日間か水しか飲んでない。
(ううぅ〜…。)
ついに座り込む。
「・・・・・・お。」
男が一人近づいてくる。
「まだ小さいけど・・・、捨て猫か?」
(あ!人間だ!)
体力はあまり残ってなくあとずさるだけで精一杯。
(フーーー!!)
逃げられないので威嚇する。
「んー。」
男が手に持っていたコンビニの袋からパンを出す。
「食うか?」
ちぎって目の前をうろつかせる。
(・・・・・・・・・あ〜。)
においの誘惑に負けパンに近づく。
(んぐ、んぐ。)
「どうだ、うまいか?」
小さかったのですぐに食べ終わる。
(もっと頂戴!)
男に向かってニャーニャー鳴く。
「ほらおいで。」
おいで、といいながら抱きかかえる。
(はぁ〜、あったかい〜。)
抱かれたまま家に連れて行かれる。
「ほら、食べていいぞ。」
(んむんむ、むぐむぐ・・・。)
「そんなに急いで食べなくても逃げていかないよ。」
それからその男の家に住み着くようになった。


「今でもまだ覚えてるよ。」
「んん〜。思い出は美化されるねぇ。」
「?」
「お前、食い始める前に俺のこと散々引っかいたり噛み付いたりしただろ。」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ、痛かったからはっきり覚えてるよ。」
「・・・過ぎたことだよ。気にするな!」
「別に気にしてないけど。」
「うん。」
ひょい、とひざの上に座る。
「これからはずぅ〜っと一緒だよね?」
「あんまり言うこと聞かないと、捨てちゃうかもよ?」
「ええ!?」
「冗談だよ。」
「もう!」
これからも仲のいい二人はずっと一緒。