ネコのふたつめ。

「えっくしょん!」
「どうしたの、にいちゃん。」
「かぜ・・・かな〜?」
「大丈夫?」
「あぁ、大丈・・・げほっげほっ!」
「大丈夫じゃないね。」
「ちょっと体温計持ってきてくれ。」
「うん。」
いろんなものが入っている引き出しを探す。
「これ?」
ちょっと古いのを取り出す。
「・・・ほかにないか?」
「これしかないよ。」
「そうか?ならそれ持ってきてくれ。」
「うん。」
体温計を受け取ってはかってみる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ピピピッピピピッ。
「えーと・・・。」
表示された数字を見る。
「風邪引いたんだな。」
体温計の示す温度は38.6℃。
「病院行くのもめんどくさいな。」
そのまままた横になる。
「寝るの?」
「うん。」
「なら一緒に寝る。」
「風邪うつるぞ?」
「にいちゃんの風邪ならいいもん。」
「よくないよ。」
「いいの、もし風邪移ってもにいちゃんがいるもん。」
「そのときに俺が治ってなかったらどうするんだ?」
「・・・とにかくいいの!」
まぁ、つらいのは自分だから。
「ぅしょ。」
ほんとに入ってくる。
「うわ、にいちゃんあっついよ。」
38度もあれば暑いだろ。
「おやすみ。」
「お休み。」
風邪は寝るのが一番だ。


「へっくし!」
「ほらやっぱり。」
「ず、ずず。」
小さな鼻をすする。
「うつった。」
「うつったな。」
じっとこっちを見ている。
「・・・なんだ?」
「なんでもないよ?」
「そうか。」
ふっと外を見てみる。
「あ、雪。」
「ほんとだ!」
ミミも俺の視線を追って気づいたらし。
「何だまた雪かきか?」
俺とは対象にミミはうれしそうだ。
「なんだ?雪見てそんなに楽しいか?」
「雪で遊びたい。」
「そっか、ミミは雪初めてか。」
「うん。」
雪はまだ降り続いている。
「風邪、治ったら一緒に遊ぶか?」
「うん!」
まぶしいほどの笑顔。
「じゃ、早く治そうな。」
「うん。」
しばらくして、ミミは寝息を立てる。
「・・・・・・ごほ、ごほっ。」
寝てからも咳をしてちょっと辛そうだ。


「にいちゃん、にいちゃん!」
「ん、うぅ?」
もう風邪は治ったのだろうかとても元気な声で起こされた。
「どうした?」
「外、外!たいへん!」
「外〜?」
やけに寒くて予想はついた。
「真っ白ー!」
「おー。積もったなー。」
「ねっ、ねっ、遊んできていい?いい?」
「いいよ。」
「やったっ!」
風邪はもう治ったのだろう。
「ならほら、寒くないようにして。帽子もかぶって。」
服を着替えさせ、上着を着せる。
「じゃ、行ってくる!」
「転んだりしないようにな?」
「わかってる。にいちゃんも早く来てね!」
「わかったなるべく急ぐよ。」
「いってきます!」
いってらっしゃいも聞かずに出て行く。
「それじゃ、ミミのために急ぐか。」
自分も寒くないようにしていく。
「・・・おー。積もったなー。」
一面真っ白でミミの歩いた跡だけがあった。
「にいちゃーん!」
走ってこっちに向かってくる。
「何だもう雪だらけじゃないか。」
パッパッと雪を払う。
「一緒に遊ぼうよ!」
「うん。何して遊ぶ?」
「んーと、・・・どんな遊びあるの?」
「そうか、ミミは知らないか。」
やさしく雪を握って、ミミに投げる。
「わぷ!?」
あまり強く握らなかったから痛くはないと思う。
「む〜!何するの、さっ!」
ミミも投げ返してくるが上を通り過ぎる。
「も〜!」
何度も投げてくるがほとんど当たらず、当たりそうになってもかわす。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「もう疲れたか?」
「もーもーも〜〜〜!」
下にある雪をそのままかき上げてくる。
「うわ、やめろ!」
「にいちゃんのいじわるー!」
「わかった、悪かったからやめろっ。」
「んもーー!」
「楽しかったか?」
「楽しくない!」
「今のは雪合戦って言うんだ。」
「なんかもっと楽しいの、ないの?」
「じゃぁ、かまくらは?」
「かまくら?」
「雪で小さな家みたいなのを作るの。」
「作れるの?」
「作れるよ。」
「じゃ、作って!」
「手伝ってくれないの?」
「てつだうの?私のために作ってくれるんじゃないの?」
「二人で作るの。俺だけじゃちょっときついよ。」
「わかった。何するの?」
「雪を集めて山にして掘るんだよ。」
「それだけ?」
「それだけ。」
「じゃ、早く早く!」
「はいはい。」
結局、雪を集めるのは俺だ。掘るのは楽しいのか俺にはやらせてくれない。
「・・・よし!出来た。」
「やった〜!」
いそいそと入っていく。
「にいちゃんも入って!」
「入れるか?」
入り口にぶつからないようにはいる。
「よっと・・・、少し狭いな。」
ミミの横に座る。
「はぁ〜〜、はぁ〜〜。」
「どうした?手、冷たいのか?」
「うん。」
「手袋はどうした?」
「外したらどっか行っちゃった。」
「一回帰ろうか?」
「もっと居たいっ。」
「また風邪引くぞ?」
「……わかった。」
外にでるとき、入り口にぶつかってしまう。
「うわっ!?」
「にゃう!?」
ドサドサドサッ!
俺は下半身だけだったが、中に居たミミは全身埋もれる。
「んーーーっ、ん〜〜〜〜!」
「おっと、大変だ!」
急いミミを救出する。
「ぷはぁあ!」
「大丈夫だったか?」
「ふー、苦しかった。」
小刻みにカタカタと震えている。
「寒いか?」
「うん。」
雪をほろい、家に帰る。
震えていたので、すぐ温まる方法を考える。
「………そうだ。」
上着を脱いでシャツになる。
「おいでミミ。」
「え?」
ミミもシャツにして、布団に入る。
「おいで。」
布団を持ち上げるとスルッと入ってくる。
「あぁー。にいちゃん暖かい。」
「ミミは冷たいな。」
少しすると震えはとまる。
「にいちゃん。」
「ん?」
「このまま、寝ても良い?」
「いいよ。」
「ん…おやすみ。」
疲れたのだろう。暖かくなるとすぐに寝息を立てる。
「俺も寝ようか。」
自分もミミに腕枕しながらねる。


朝、布団は蹴飛ばされてかかってなかった。
「うう!?」
あわてて布団をかけなおし、ミミを湯たんぽの代わりにする。
「えっくしょん!!」
が、もう遅かった。
「はー、また風邪…。」
「……げふっ、げふっ。」
今度は二人仲良く一緒に風邪。