盲目の車椅子


「…………」
病室の前で止まる。
「………はぁ」
何を言われるだろう…。
いや、何も言われないかもしれないけど。
「………」
ドアをノックしようと軽く拳を作る。
「………はぁ」
ノックはせず、そのまま腕をだらんとたれ下げる。
「…何してんの?」
「うわあ!?」
突然後から声を掛けられる。
「…ビックリさせないでくれ沙織ちゃん」
「いや、させたつもりはこれっぽっちも無いんですが」
「…………」
ドアに向かう。
「…さっきから何してんの?」
「いや、ちょっと、ね…」
「……あ、わかった、昨日悠里に何かしたんでしょ」
ドキッ!
「だから入りづらいんでしょ」
ドキドキッ!!
「…どうやらその顔は図星のようですな?」
「……ああ」
「まったく、何したのよ」
「いや、帰り際に…」
「うんうん」
「誰も居なかったから…」
「うんうん」
「キスした」
「…………それだけ?」
「ああ、それだけ」
「………はぁぁ」
思いっきり溜めてから息を吐き出す。
「良いじゃないそれくらい、恋人なんだから」
「いや、でもいきなりだから…」
「いきなりだから何よ」
「……怒ってないかなー、と……」
「……はぁ」
両手の掌を上に向け、『やれやれ』の格好をする。
「怒ってるわけ無いでしょう」
「し、しかし……」
「いいから入んなさいよ」
「だが…」
「いいから、入れ!」
「…わかった」
深呼吸し、ドアをノックする。
「………」
こんこん。
『はーい?』
「沙奈儀だが…」
『あ、どうぞ。入ってください』
「それでは、失礼」
部屋の中へ入る。
「こんにちは、聡さん」
「あ、ああ、こんにちは」
……………。
「ゆ、悠里?」
「はい?」 
「その、昨日の事なんだが……」
見えないだろうが、頭を下げる。
「すまなかった」
「…え、え?何がですか?」
「いや、だから、キス」
「………へ?」
キョトン、とする。
「何で、謝るんですか…?」
「いや」
「私は別にそんな、さよならのキスだなんて、恥ずかしかったですけど、嬉しかったですよ?」
「…………」
「ほら、言ったじゃない」
どうだ、と言わんばかりに言う。
「好きな人からキスされて、嫌なわけ無いじゃない」
「…そうなのか?」
「そうよ」
「………ふむ」
「じゃ、私は帰るから」
「……何しに来たんだ?」
「まあ、悠里もなんともなさそうだし、邪魔しちゃまずいからね」
それじゃ、と手を振りながら部屋を出て行く。
「………」
「…あの、聡さん?」
「……ん、何だい?」
「沙織は、どこに行ったんですか?」
「帰った」
「え、もう?」
「邪魔しちゃまずいからって帰っちゃった」
「…………」
「どうかしたの?」
「はい、あの、手術の日が決まったんです」
「ホント?いつ?」
「一週間後です」
「一週間か…」
「はい…」
ベッドへと腰掛ける。
「手術、怖い?」
「はい……少し、怖いです」
「手術が?それとも、失敗するのが?」
「…両方です。私、怖がりだから」
悠里の体が傾き、聡へ寄りかかる。
「私、聡さんを見てみたい。声を聞くだけ、暖かさを感じるだけじゃ、少し寂しいです」
「………きっと良くなるさ」
「………」
「言ったじゃないか、見えなくても僕が悠里の目になると」
「……うん」
悠里は聡の腕に強く抱きつく。
「でも、やっぱり見えなかったら嫌だな…」
「まあ、そうだろうな」
優しく抱き寄せ、静かに頭を撫でる。
「成功しなかったらって、考えちゃ駄目だよ」
「…わかってるけど」
「楽しい事を考えよう。大丈夫だよ、成功しても失敗しても、ずっと悠里のそばにいるよ」
「うん……ありがとう」


ネガティブな考えはしないようにと言ったものの、実際はそううまく行かず、ずっとこの調子で一週間が過ぎて行った。


「…もう、時間ですね」
「ああ」
時計を見ると予定の時間までもう少しだった。
「気をつけてな」
「…何に気をつければ良いんですか?」
「…頑張ってな」
「はい……」
ガラガラと悠里を乗せたベッドが手術室に運ばれていく。
「…………」
「…心配?」
「…そりゃ、心配さ」
「だろうね…でも、命にかかわることじゃないし、もっと肩の力抜いて待ってれば良いじゃない」
「それが、そうもいかないんだ……」
そわそわする。
「何か、こう……なんて言うのかな?」
うまく言葉に出来なくて、ジェスチャーが大きくなる。
「手術しているのを待ってるってだけで何となく不安になるの」
「…心配性だねえ」
「………だなぁ」
手術中、と紅く光るランプを見上げる。


「………………」
「聡さん」
「…………」
「……聡さん」
「ん、ああ、なんだ?」
「何だじゃないよ、もう終わったよ?」
「もう終わった?」
「うん」
「……寝てたのか?」
「寝てたんじゃない?」
「そうか……悠里は?」
「病室に戻ってる」
「ん、わかった」
欠伸をし、目を擦りつつ悠里の病室へ向かう。
「ふぁぁ…悠里?」
「しっ!…今寝てるから。」
「ああ、全身麻酔でやったのか?」
「うん。だから、今日は起きないかもね」
「そうか…」
ベッドの脇の椅子へ腰掛ける。
「…沙織ちゃんはもう帰るのか?」
「うん、さすがに少し遅いからね」
「そうか」
それじゃ、と軽く挨拶し沙織は出て行く。
「…………」
目に包帯を巻き、顔が半分ほど隠れている。
「……その包帯を取ったとき、見えると良いな………」
そっと優しく。
優しく、悠里の頭を撫でる。
窓から夕日が悠里と聡を紅く照らす。
「…………」
布団の上に出ている手を、そっと握る。
眠っていても、少し握り返すのを感じる。
「…………それじゃ、僕も帰るよ」
手を解き、撫でる手を止め、立ち上がる。
「……じゃ」
いつものようにさよならの挨拶をし、出て行く。


「………ん」
朝…。
いつものように目が覚める。
「ふぁぁ……」
大きく伸びをし、大きく欠伸をする。
「………」
朝、なのだろうか。
包帯のせいか、光が見えない。
「………」
少し、不安になる。
光が見えない。
たったそれだけで、失敗したのではないか、そう思ってしまう。
「………聡さん」
こういう時に、そばにいて欲しい。
今こうして不安になっている。
そばにいて、『大丈夫だ』って言って欲しい。
「……そんな、それじゃ、ずっとそばに居なくちゃならないじゃない」
意外と、わがままなのかな、私…?
悶々と考えてるうちに結構時間が経った。
いつもと同じくらいの時間に起きたならそろそろ聡さんが来るはず。
まだかまだかと待っていると足音が聞こえてくる。
その足音はだんだんと近づき、部屋の前で止まる。
コンコン。
「…はい」
カチャリ、とドアが開く。
「やっほー、どう?具合」
「うん……大丈夫」
…沙織だった。
別にがっかりって事は無い。
でも何となく、肩透かしくらったみたいだ。
「そう、良かった」
ベッドの脇の椅子に座る。
「いや、いつも聡さんが先に居たりして悠里とあまり話せなかったからさ、早めに来てみたの」
「そうなの?」
「そうよ?はたから見ると、立ち入る隙の無いくらいなんだから」
「そう…」
「………どうしたの?元気ないよ?」
「そ、そんなこと無いよ」
軽く首を横に振る。
「包帯が邪魔で光が見えないから、少し不安なだけ」
「……こんな時、聡さんが居てくれたらな、って思うんでしょ?」
「だ…だから、そんなんじゃないって…」
「いいんだよ?恋する乙女だから良いんだよ?」
「………」
…見えないからあれだけど、多分ニヤニヤしてるな、と悠里は思う。
と、そこでちょうど悠里の待ち望んだ人物がやってきた。
「おはよう」
「おはろー」
少し驚き、感心したよいうにいう。
「お、沙織ちゃん今日早いね」
「いっつも聡さんに先越されるからね」
「でも残念、僕も早めに来ました」
「あちゃー」
座っていた椅子から立ち上がる。
「じゃあ、私はこれで帰るね」
「え?何で?」
「邪魔しちゃいけないでしょう?」
「別に居ても良いのに…」
「いやいや、いいのいいの」
「僕も構わないぞ?」
「いいから」
それじゃ、とだけ言い部屋を出て行く。
「…目は大丈夫かい?」
「はい」
「そうか…」
沙織の座っていた椅子に座る。
「包帯、いつ取れるんだい?」
「三日後には取れるそうです」
「そうか…」
悠里が起き上がる。
「寝て無くて大丈夫か?」
「大丈夫ですよ」
わずかに身を乗り出す。
「……怖いです。包帯のせいだと思うんですけど、光が見えないし。せっかく手術したのに、聡さんが…聡さんが見えないと私…」
「悠里…」
起こしている上半身を抱き寄せる。
「大丈夫だよ、医者だって頑張ってくれたんだ、きっと良くなる」
「聡さんは、見えなくたって、いろんなものを感じとれるって言ってくれました」
「……」
「でも…でも、やっぱり、見えたほうがいいです…」
ぎゅっ、と顔を胸に押し当てる。
「聡さんや沙織の笑う顔が見たい…かっこ悪いところも、かっこ良いとこも見てみたい。いつもぼんやりとしか見えない光もはっきり見たい。車椅子でだけど、一人でいろいろ歩いてみたい…」
「…きっと、できるさ」
優しく撫でる。
「出来じゃいなんて思っちゃだめだ」
「でも…」
「大丈夫…いつだって、僕がいるよ」
「………」
強く、悠里が抱きしめてくる。
「……」
胸の辺りが濡れていくのを感じる。
「……泣かなくても、大丈夫だから」
「………うん」
グシグシと涙を拭う。
「…シャツ、濡れちゃったね」
「悠里の為なら、構わない」
「……ふふ」
「お、今日はじめての笑顔。悠里は笑ってたほうが良いよ」
「ありがとう」
笑ってくれたが、やはりまだいつものような輝くような笑顔ではない。
「…また、どこか行こうか」
「……どこへですか?」
「どこかに、今度は二人だけで」
「………」
「気分転換は必要だろう?」
「良いんですか?」
「良いに決まってる、行きたい場所ある?」
「いえ……特に無いです」
「特に無いのか…」
あごに手をやる。
「………ん〜」
どこか楽しい場所は無いものか考える。
どこか楽しい場所を…。
どこか…。
「行きたい場所、ホントに無いの?」
「はい、あまり外出する事は考えて無いので…」
「…んー」
困ったなぁ…。


「それで私のところ来たの?」
「そう」
「で、なんで私なわけ?」
「いや、付き合いも長いし…何か無いかなーと思って…」
「…はぁ、悠里の為なんでしょ?そのくらい自分で考えなさいよ」
「思いつかないから聞いてるんだけどなぁ…」
じーっと目を見る。
「海にも連れてったのになぁ…」
「…………」
「あぁ、今度はどこに行こうかなぁ…」
「…ずるい」
「ずるくないよー」


「おはよー」
「おはよう、聡さん」
「今日は……」
「…どうしたんですか?」
「いや、包帯にシミ?みたいなのがあるから」
「ッ………」
一瞬顔を隠そうとする。
「………どうしたんだい?」
「…これは……」
わずかにためらう。
「…僕にも、言えないこと?」
ふるふると首を横に振る。
「………昨日の夜、包帯を取ったときの事が怖くて、聡さんがそばにいなくて寂しくて、涙が止まらなくなったの…」
「………大丈夫、今日は悠里のそばにいっぱい居るよ」
「……いっぱい?」
「そう。どこかに行くのも良いけど、ずっとそばに居るだけなのも良いかなって、思ってさ」
昨日沙織に相談したところ、そばに居るだけでも良いと思う、との事だった。
「だから今日はここに泊まっていくよ」
「そ、そんな、良いですよそこまでしなくても…」
「いいや、寂しかったんだろ?良いじゃないか」
ポフ、と頭に手を乗せる。
「泣いてたんだろ?胸を貸すよ」
「……」
悠里の口元が緩む。
「……ありがとう、聡さん」
「どう致しまして」
もう一つ付け足す。
「今日沙織ちゃん来ないらしいよ」
「え、どうして?」
「邪魔しないようにだって」
「…居ても良いのに」
ま、気持ちはありがたいけどな。
「せっかくだから、ここでゆっくりさせてもらうよ」
「はい」
「それで、今日は何の本を読もうか…?」
持ってきたバッグの中をまさぐる。
「…手を……」
「…ん?なに?」
「手を……触らせてください…」
「手を?」
さまようように突き出された手を握る。
悠里は両手で握り返す。
「このままで、いてください…」
「……いいよ」
悠里の手は細くて、少しだけ冷たい。
「聡さんの手、あったかい…」
「悠里の手は少し冷たいね」
「そうですか?」
「うん、手の冷たい人は心が暖かいって言うよね」
「そんなこと無いですよ」
悠里が、ふと窓のほうを向く。
「…今日、天気良いみたいですね」
「そうだな、快晴だな」
手を離して立ち上がる。
「よっ!ぐむむ!」
ベッドを動かす。
よく日の当たる窓のそばまで動かす。
「…どうだ?」
「……暖かい…」
「気持ち良いだろ?」
「はい」
悠里はベッドに横になる。
「…包帯越しでも、光が見えます」
「…見えるのか?」
「はい…でも、ぼんやりとです」
「…そうか」
やはり包帯を取るまでは、分からないと言うことか。
「光が見えるって事は、失敗はして無いって事か?」
「そうだと、嬉しいですね」
「きっとそうさ」
ベッドのふちに座る。
「こう暖かいと眠くなるなぁ…」
「ですねぇ」
「…………」
「………」
「ふあぁ〜〜ぁ……」


「…はっ!?」
……寝てた?
「おはよう聡さん」
「…おはよう」
「よく寝れましたか?」
「よく寝れた」
部屋が薄暗い。
どうやらかなり寝ていたようだ。
「……っはぁ〜、しまった…」
ずっと喋るなりなんなりしているつもりだったのに、寝てしまった。
「ごめんな、寝ちゃって…」
「良いですよ、別に」
「いや…、しかし、もうすっかり暗いな」
時計を確認する。
「…8時?」
そんなに寝てたのか?
「気持ちよさそうな寝息でした」
「……ずっと聞いてたの?」
「はい、寝言もしっかり聞きました…」
「…………」
何で顔を赤らめるんだ……。
「恥ずかしい寝言でも言ってた?」
「はい、それはもう……」
「………」
どうやら悠里が恥ずかしい寝言だったらしい。
「それより、聡さんはまだ眠いですか?」
「あ、うん、そうだな…まだ眠いな…」
「なら、もう寝ませんか?」
「…そうだな、悠里はもう眠いか」
「はい…すみません」
「………」
ふぅ、と内心ため息をつく。
「じゃあ、おやすみ」
「お休みなさい」
横になり、眠る。
「…………ふあぁ…」
もう一眠りするか。
話は、また明日か…。


「………」
目が覚めた。
辺りはまだ真っ暗だ。
「すぅー…すぅー…」
悠里の寝息も聞こえる。
変な時間に寝てしまったのがいけないのか。
「……やれやれ、トイレでも行くか」
すっきりしてまた寝よう。
青白いライトの照らす廊下を行き、トイレで用をたす。
「………んー」
完全に眠くなくなってしまった。
ジュースを買い、部屋へ戻る。
「今何時だ…?」
月明かりで時計を見る。
2時43分。
「……また中途半端な時間に起きたもんだなぁ」
悠里のベッドの近くの椅子に座る。
「………明日だなぁ」
優しく頬を撫でる。
「見えてると、良いなぁ…」
真っ白な三日月を見上げ、そうつぶやく。
光が見えるといっていたから失明はしていないだろう。
しかし、はっきり物の輪郭が見えるかどうかは包帯を取らなければわからない。
確か明日には取れるはずだ。
それで見えて喜んだって、見えなくて落胆したって、悠里への思いは変わらないから…。


「……る…」
……………。
「………さ…」
……んっ?
誰か呼んでるのか?
「聡さんっ」
「……ああ、おはよう悠里」
「おはようです」
早々に悠里の顔が近くに見える。
きのうは何か考えていたらそのまま悠里のベッドに伏して眠ってしまったらしい。
「包帯取るの、今日だっけ?」
「はい…」
「そっか、いよいよか…」
悠里はせかせかとしきりに指を動かしたりする。
期待と不安、両方があるのだろう。
寝ぼけているせいもあり、ろくに話もせずに時間が来た。
ノック音が聞こえ、まだ若い感じの医者が入ってくる。
いくつか話をし、包帯をとる。
結び目をとると、するするとほどけていく。
包帯を持ち、医者は退室する。
「……悠里…」
「………」
固唾を呑んで見守る。
「……どうだ?」
「……………」
ゆっくり、眩しさに目を細めながら開けていく。
「…………」
「…………」
しばらく前方を見つめる。
「………」
「………」
「……聡さん」
こちらを向く。
目はいつもと違い、真直ぐ聡の目を見つめいている。
「………見える……」
「…見えるのか?」
「…うん……」
大袈裟にうなずき、返事をする。
「聡さんが、部屋が…全部、見えるよ…」
はじめてのものを見る子供のように目を丸くして首を動かす。
忙しなく動いていた首は聡のほうを向いて止まる。
「…夢じゃ、無いよね…?」
「ああ、夢じゃない」
「夢じゃ……無い…」
そう口にすると涙が滲み、ぽろぽろと落ちる。
「ど、どうした!?」
「…ホントだと、思ったら、何だか知らないけど……もう、涙止まんないよぉ……」
「………」
一生懸命涙を拭っている悠里を無言で抱きしめる。
「………」


「おさまった?」
「うん…」
少し顔を赤らめ、うつむく。
「嬉しいのに泣くなんて、恥ずかしいね」
「良いじゃないか、嬉し涙。そう流せるものじゃない」
「うん」
言いつつもうつむいたまま。
「…目が見えるって、何だか恥ずかしいですね」
「そうか?」
「うん。だって、心配して覗き込んでくる顔とか、笑ってる顔とか、そういうの全部、私に向けられてるものだと思うとなんか恥ずかしくなって、ずっと見ていられないよ」
「……僕の顔を見るのが、恥ずかしいの?」
「…うん。ホントは、聡さんに見られてるのも何だか顔が緩んじゃう」
「……」
うつむいた悠里を下から覗き込むように見る。
「やっ…もうっ」
目が合うと、見る見る顔が赤くなる。
「…ホント、可愛いんだから」
そう言って、軽く抱き寄せる。
「………」
今度は首筋まで赤くなる。
「……恥ずかしくて死にそうです」
「大丈夫、恥ずかしさでは死なないから」
「もうっ、そのくらい恥ずかしいって事ですっ!」
今までに無いくらい元気に喋っている。
やっぱり、見えるのがとても嬉しいんだろう。
「…今度、どこかに遊びに行こうか」
「…いいんですか?」
「いいさ、どこにでも行くよ?」
「……じゃあ、」
きちんと顔を上げ、聡の目を見て。
「聡さんの別荘に、もう一度」
「…もう一回行くの?」
「だって、あの時は海が見えなかったんだもん」
だから、行くならあそこ、と言う。
「うん、悠里が行きたいのなら」
立ち上がる。
片手を腹の前で折り、お辞儀する。
「お嬢様の仰せのままに」
「………」
「…なんてね」
「…ぷ、あはは」
「む、何で笑うの?」
「いや、見えなかったときもそういうのやってたんだなぁ、ってちょっと思って」
…まぁ、やってた。
「でも、今のかっこよかったよ?」
「ありがと」
ベッドの脇の椅子に座りなおす。
「今度は何泊が良い?」
「二泊三日、沙織付で」
「沙織ちゃんも連れて行くの?」
「もちろん、おいしい料理が食べれるからね」
「…悠里も結構悪だねぇ」
「そう?」
「うん……それじゃ、いつにしようか?」
「えっと、たしかもう沙織夏休みだったと思うから、準備が出来次第?」
「夏休みか。いつが良いか沙織ちゃんに聞いてみるよ」
「うん」


「と、いうことでまた別荘に泊まりに行きます」
「………、暇だったから別にいいんだけどさ」
「ん?何かあるの?」
「いいえ、なーんにもありませーん」
「…まあ、今度は三人一緒にあそべるな」
「悠里に無理させたら駄目だよ?」
「わかってるさ、それくらい」
「で、いつ行くの?」
「それは沙織ちゃんの希望の日で」
「……ならすぐ行こう。明日くらいに」
「明日は早すぎるよ」
「なら明後日」
「……そのくらいなら良いかな?」
「じゃ、準備しておくから」
「わかった」


「やっほー」
「あ、沙織」
「迎えに来たよー」
「もう?少し早い気がするけど…」
「いや、早く行って長い時間遊ぼうって聡さんがさ」
「ん?じゃ、もう聡さん来てるの?」
「うん。駐車場で待っててもらってる」
「そっか、じゃあもう行こうか」
「よーし、じゃあ悠里号しゅっぱーつ!」
車椅子を急加速させてエレベーターに向かう。
「………」
ちんっ、と鳴らせて扉が開く。
「……」
「悠里、一人で一階まで降りれる?」
「うん、それくらい出来るよ」
「よし」
悠里をエレベーターに乗せて沙織は外へ出る。
「一階まで競争!」
「え!?」
「よーい…」
扉が閉まる。
「どん!」
閉まると同時にダッシュで階段に向かう。
「………」
5から4、3,2、とボタンの光が移っていく。
そして悠々一階に到着。
ちんっ、と扉が開く。
「………」
「はぁー、はぁー、はぁー…」
「…お疲れ様」
「はぁー、はぁー、わ、私の勝ちぃ…」
沙織の息が整うのを待ってから喋る。
「…じゃ、行こう?」
「うん、よし、行こう」
車椅子を押して駐車場に近い出口へ向かう。
「………海」
「ん?海?」
「うん……泳げたらな、って」
「まぁ…泳げ無い事も無いと思うけど、腕だけで泳ぐのって難しいんじゃないかな?」
「…なら、浅いところで聡さんと一緒に……」
すー、と首筋まで朱がさす。
「……悠里も変わったね」
ぽそ、と呟く。
「なに?」
「いんや、なんでもない」
なんでもないですよ、お惚気なんてクソ喰らえ、ちくしょう。
「…そだ、聡さん、悠里のために車椅子の乗り降り楽な車買ったんだよ?」
「え…私のために?」
「うん。なんか、悠里のためなら痛くも痒くも無いとか」
財布の事だろうか?
「……………」
「高級車よりも高いみたいで、私なんか聞き間違いかと思う額だった」
「……へー」
何か気の抜けた返事だなぁ。
眺めの通路を出て外に出る。
平日の昼前だが駐車場は空いてる訳でもなかった。
「えーっと、どの車だったかなぁ…」
頭をめぐらせて探しているとこっちに向かって歩いてくる人影が見えた。
「あ…聡さん」
「おはよう悠里」
「おはようございます」
「…聡さんの車どこにあったっけ?」
「あっちだ…僕が悠里を押そう」
悠里を聡にあずけ、車まで歩いていく。
「しっかし、聡さんも凄いね」
「何がだ?」
「まあ、車もそうなんだけど、その人目もはばからずに悠里を溺愛するのとか」
「…遠慮してるぞ?」
「それでしてるのか…」
私が居ない時はいつもどうなってるんだ…。
「それと、溺愛は言いすぎじゃないか?」
「いや、十分すぎるほど溺愛してるじゃん」
「……そんなに愛情過多か?」
「そこまでじゃないけど……今でもこうなんだから、もっと悠里が遠慮しなくなれば誰もがうらやむカップルになれるよ。見てるのも恥ずかしいくらい」
二人のラブラブ空間にいると何となく遠慮せざるをえなくなる感じがして居ずらい。
したがって、悠里が来て欲しいといわなければ今回は断っていたと思う。
車についた。
「よーし、沙織ちゃんは乗っててくれ」
「あいよ」
「どれどれまずここに乗せて…」
車椅子をプレートの上に乗せる。
「で?これで良いのか?」
乗降スイッチをぽちっとな。
ヴィィィィィィィィィィ、
「おお!」
ィィィィィィィィン。
「いやー、車椅子ごとだと楽だね」
ドアを閉めて自分は運転席に座る。
「よーし、じゃあ出発ー」
「おー」
ゆっくりと車は前進する。


悠里のおかげで移動中、暇はしなかった。
「うわぁ!海だぁ!」
「あの川大きい!」
「あっ!あの車、犬が乗ってる!」
「あの花可愛い!」
この調子。
きっと悠里には目に映るものすべてが新鮮なのだろう。
そのたびに反応、もしくは答える沙織と矢継ぎ早に喋る悠里を見ていると微笑ましくて顔がほころぶ。
そうこうしているうちに到着。
「はい到着、お忘れ物の無いようお願いします」
「はーい」
運転席を降り、悠里の席のドアを開ける。
「僕は荷物下ろすから沙織ちゃん悠里お願い」
「あいよ」
沙織は悠里を押して中に。
聡は旅行鞄を二つ持ち、家の中に入る。
「うわぁ…凄いね」
「凄いよねぇ…うらやましいなぁ」
「だねぇ…」
「……(悠里が、なんだけどなぁ)……」
「何だ二人とも、来たければいつでも来ていいんだぞ?」
「ん〜、そうじゃないんだなぁ」
「じゃあ、どんなんだ?」
「こういうのを持ってるのが良いなぁ、と」
「……別荘持ってるだけがそんなに良いか?」
「………」
「あの車高いんでしょ?」
「まあ、車では高いな」
そこで普通の顔で車の中では、とか言うのがブルジョアなのだ。
普通の女子高生はまったく縁が無い。
「ん?何か言ったか?」
「いやー、べつにー」
鞄の中から荷物を出す。
「沙織ちゃん、今回も泳ぐのか?」
「ん?そのつもりだけど…」
「じゃあ、クラゲに気をつけてね」
「……クラゲ出るなら泳がないよ」
刺されたく無いし…。
「泳がないなら、今回は山に行ってみないか?」
「…山かぁ」
「蚊が出るけど、クラゲよりマシでしょ」
「スプレーあるの?」
「買ってきてあるよ」
「…最初から山行くつもりだったの?」
「まあ、クラゲの時期だし、海は前入ったし」
「…じゃあ、なんで海に入るか聞いたの?」
「いや、クラゲ居ても行くかなぁ、と思って」
「普通行かないでしょ」
「うん、まあ。…山なら悠里もいけるし、景色が良い所もあるから弁当でも作っていくと良いと思うな」
「いいねぇ、悠里どう?」
「うん、海は泳げないから良いね」
「じゃあ、早速準備だね」
「うん」
荷物を片付け、早々と弁当の準備をする。


まあ、ピクニックみたいなもので。
「ねぇ聡さん、持ってくれないの?」
「何だそれくらい、もう少しだから頑張れ」
「えー…重いー」
「……ねえ、聡さん」
「ん、どうした?」
「結構重そうだし、頑張って作ってくれたんだから持ってあげてよ」
「…むう、悠里のお願いなら」
「ふぃー」
「お…なかなか……」
聡は荷物を持ち、なおかつ悠里を押す形になる。
「……重いのだが」
「ん?何?」
沙織に小さく言う。
「………いや、何でもない」
「そう?」
悠里と話しをしていたため――とても楽しそうだったから――我慢する事にした。
木漏れ日を浴びながら、優しく吹く風を感じながら、目的地に到着する。
「うわぁー…」
「…いい眺めだね」
「だろう?」
遠くに街が見え、海と海岸線とそれに面した山が一望できる。
「この前散策してたら見つけた」
「良い場所があったもんだね」
「ふふふ」
少し誇らしげに笑う。
「まだ昼までは時間があるな」
腕時計を見るとまだ昼までは時間があった。
「…まだ昼までは時間があるけど、もう食べちゃおっか?」
「えー?まだ早くない?」
「沙織ちゃんはつまみ食いしてたからだろ?」
「そうなの?」
「な、ばっ、味見してただけだよっ」
顔を紅くして手をブンブン振る。
「ま、そういう事にしても良いけど」
「ほ、ホントだってば〜…」
「それはさて置き、悠里はどう?」
「うん……私も少し早くても良いかな」
「…だそうですよ?」
「悠里が食べたいなら良いけどさ」
「ん、じゃあ早速広げようか」
荷物から三段の重箱を取り出す。
「今日は中華です」
ばーん、と効果音を自分で付けてシートの上に並べる。
「うわぁ…沙織ちゃんの料理、見た目も綺麗だね」
「でしょう?」
「いい匂いだ…」
漂ってくるいい匂いに食欲がそそられる。
それぞれに皿を配り、取り分ける。
「それじゃ、」
『いただきます』
作ってからあまり時間がたっていないので香ばしい、スパイシーな匂いが漂う。
「ん…美味しい!」
「んっふふー、今回は中華。私の得意料理なのですよ」
「へぇ、沙織ちゃんは中華が得意なのか」
「意外だね」
「意外だった?」
「うん、てっきり洋食なのかと思ってた」
「何となく中華なイメージ無いからな」
「ふふん、一応チャイナドレスもあったりする」
「へー…」
チャイナドレスの沙織ちゃん………。
「わぁ、今度見てみたいなぁ」
「いいよ〜、聡さんはあまりの美しさに惚れるかもよ〜?」
「それは無いな」
キッパリ、断言する。
「…ちょっとくらい乗ってくれても良いのに」
頬を膨らませ、料理を口に運ぶ。
怒って膨らんでるのか料理で膨らんでるのか分からなくなった。
「ま、その姿で他の男を誘惑するんだな。結婚式に行ってやるぞ」
「……好きな人が出来たらね」
空を仰いでボーっとする。
「…どうだい悠里、美味しい?」
「うん、おいしいっ」
「何かまだ欲しいのはあるかい?」
「えっと、じゃあ、エビチリを…」
「了解」
皿を受け取り、せいせい乗せる。
「はい」
「うわ、取りすぎだよ」
受け取った皿には山盛りと言うほどではないけど結構な量が盛られていた。
「そうか?」
「うん。そんなに食べれないよ」
「むう、じゃあ残したら僕が食べるよ」
「…うん」
三人では食べきれないかもしれないくらい量があった弁当は全て三人の胃に収まった。
「ふぅ……お腹いっぱい」
「何か、作りすぎたかと思ったけど全部なくなったね」
「それくらいおいしかったんだな、沙織ちゃんが奥さんになる人は幸せだな」
「そんな事無いってば」
満更でもなく顔を紅潮させる。
すぐ動くのは辛かったので、景色を眺めて、風を浴びて時間をすごす。
「よっ……ふー」
広げられたシートの上に寝転がる。
「あ、食べた後すぐ横になると駄目なんだよ」
「…今くらいいいだろ」
ふう、と息をつき、草の青いにおいをかぐ。
「……………」
空には雲がまばらに浮かんでいる。
見ていると色々な形に見えてくるから不思議。
しばらくそうしていると、雲がだんだん多くなってくる。
「…雲行きが怪しくなってきたか?」
「うん…気温も下がってきたみたいだし、雨でも降るのかな?」
確かめるように空を仰ぐ。
「……じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「はいはーい、今度は私が悠里を押す」
「…まあ、良いだろう」
「よーし、じゃあパパっと片付けちゃいまーす」
使った食器、シートなどを片付け、早々に戻る。
今度は景色などを楽しまず、できるだけ早く歩いて帰る。


「……何だか大雨になりそうだね」
「そうだな」
帰ってきてすぐ、雨は降り始めた。
はじめはシトシト雨であったが、次第に強くなり、今は雨音が強く聞こえる。
「…せっかく花火とか買ってきたのに」
「え?花火!?」
「ああ」
「あー…明日晴れるかなぁ…」
「晴れると良いね」
「だねぇ…花火なら悠里も楽しいのにね」
「うん……あ、照る照る坊主とか作ってみようか」
「お!いいねぇ、やろうやろう」
「うむ、今ティッシュを用意しよう」
棚の中から口の開いていないティッシュを取り出す。
「よし、何体作ろうか?」
「ん〜…ティッシュがなくなるくらい、とか?」
「…まあ、暇つぶしにはなるし、やるか?」
「やるやるー」
ビビッとティッシュを開けて、照る照る坊主製作開始。
「ふふふんふ〜ん♪」
「……………」
「…どうした、悠里。作らないのか?」
「いや、その、なんか勿体無いなーと思っちゃって…」
「いやいや、気にする事は無い。明日の快晴の為の犠牲だ、安いものだ」
「うん…」
「なんなら、悠里は別に作らなくても大丈夫だぞ」
「…そう言うわけにもいかないじゃない?」
何枚か取って玉を作る。
「簡単だし、私も作るよ」
「よし、ならじゃんじゃん作ってくれ」
「おーけー」
三人だとすぐにたくさんできる。
そこはかとなく思っていた以上に量が出来てくる。
「……ちょっと作りすぎかなぁ」
「良いじゃん良いじゃんもっと作ろうよ」
「まあ……良いけど」
……沙織ちゃんは完全に遊んでるな。
「…しかし、沙織ちゃんの照る照る坊主は変だなぁ?」
「え?どうして?」
「だって、笑ってないよ?」
「だって、照る照る坊主って首吊ってるじゃん?」
「たしかに」
「だから苦しそうに顔を描いた」
窓辺に並んでいる首を吊って苦しそうな照る照る坊主………。
「……並べて吊るすと気持ち悪いから止めてくれ」
「えー?良いと思うんだけどなぁ……」
渋々といった感じで次から普通に作る。
「………よし、これくらいで良いかな?」
照る照る坊主、ティッシュ一箱分完成。
「……凄い量だね」
「こんだけあれば、明日は晴れるでしょ」
「そうだな」
気休めだけどな。
「うん。じゃあ、私晩御飯作るよ」
「お願いする」
時計はもう6時を過ぎていた。
「晩御飯はなんだろうね」
「分からないけど、楽しみだな」
おいしそうな料理をあれこれ想像しながら悠里の隣に座る。
「……悠里」
「…何ですか?」
「…その………今日のだな」
「はい」
「夕食を食べ終わってから……じゃなくて…」
「?」
「……寝る前に………」
『聡さーん!』
「………」
「………」
『聡さーん!ちょっと手伝ってー!』
「……すまん、後でまた話す」
「…はい」


結局、あれやこれやとやってる内に就寝時間になってしまった。
「じゃ、聡さんおやすみー」
「お休み沙織ちゃん」
「悠里もおやすみー」
「うん、おやすみ」
沙織はさっさと自分の割り当ての寝室に行く。
「………で、話ってなんですか?」
「うん、ま、ちょっとベランダのほうに行こうよ」
「はい」
車椅子を押し、窓際まで行く。
「……悠里」
「はい…」
「君は、将来の事は、考えたりすることあるかい?」
「え、と…たまになら、考えたりします」
あまり考えた事が無いのか、苦笑いして頬を人差し指で掻く。
「……悠里」
「…はい」
…悠里はもう分かってるのかもしれないけれど、一生に一度きりかもしれない言葉をきちんと伝える。
今回はそのためにここに来たようなものだと自分は思っている。
「僕は……」
精一杯の誠意を持って話す。
「君が好きだ」
「はい」
悠里は真剣に、じっとこちらを見つめている。
「………愛している」
「……はい」
頷いてくれる。
雨が降り、月明かりも見えないけれど、こちらを見ている瞳は輝いているよう見える。
「…………だから」
……もう、一言。
後……一言。
「…だから………」
「……………」
今だ、行くんだ!
自分の心で自分に叫ぶ。
数秒間の沈黙。
雨音だけが静かに規則的に聞こえてくる。
「……結婚、なんて、まだ悠里には、早いだろうか…………」
段々声が小さくなってしまった。
「………」
それに悠里は笑いもせず、ただ真剣に、口を開く。
「私は……聡さんなら、全然オッケーです」
「…………」
悠里だから、これまで大好きだった悠里だから、そんな事は無いと思っていた。
でも実際、安心すると何だか力が抜けてすぐには言葉を発する事が出来なかった。
「……でも」
「…?」
「聡さんは、私で良いの?」
「…何を……」
「だって、沙織ちゃんみたいに聡さんのために手料理作ったり出来ないし、車椅子のままだし、色々と、聡さんの負担になっちゃうよ……」
「………いいんだよ」
「あっ……」
優しく、大きく悠里を抱擁する。
「僕は、悠里の全部が、好きなんだよ?」
「…………」
「全然、負担なんかじゃないよ」
「……でも」
ぴた、と悠里の口を塞ぐ。
「でもじゃない、いいんだよ」
「………」
塞いでいた口から手を離す。
「悠里が料理を作れないなら、僕が作ればいい。逆になるだけだよ」
「………でもっ」
「でもじゃないってば。僕はそういうところも合わせて、悠里が好きなんだよ」
「………いいの?」
「いいの」
「………………」
悠里の目がうるうると潤んでくる。
「………っ」
「………」
今度は悠里が聡に抱きつく。
それをまた優しく抱き返す。
「………ありがとう、聡さん」
聡の目を見つめる。
「私も…聡さんが、大好き」
満開に咲き誇る笑顔で、答えを返す。











「ねえ、聡さん」
「ん?なんだい?」
「聡さんの友達って、若い人いる?」
「いるよ」
「じゃあさ、私に合いそうな人紹介してよ」
「…突然どうして?」
「いやぁ、恋する乙女は美しくなるって言うか、ほら」
「……詰まり自分も恋人が欲しいと?」
「……ん、まぁ、そうなるかな?」
「んっふふー」
「な、なにさ」
「いや、なんでもないよ」
「……してくれないの?してくれるの?」
「いや、してやっても良いよ」
「じゃあ、じゃあ、今度聡さん頼むよ!」
「うむ、任せとけ」



END





後書き?
まあ、無理やり終わらせた感じになってしまいました。
長編は初めてなもんで、性格が変わってるとか、口調が変わってるとかあるかもしれない。
もし読んでくれた人が居たなら、大感謝ですよ。
いつでも構わないんで感想なんかくれたら大大大感動ですよ。