……カタカタ…。
「ん?」
カタカタカタカタカタ。
「え、な?何の音?」
突然部屋に響く何かの音。
「なになになになになに?」
ガタガタガタ!
音が大きくなってきました。
「ひぃ!?地震じゃないよ?心霊現象!?」
バサバサゴドゴドバサバサバターン!!
本棚がものすごい勢いで揺れて本が落ちてきて最後に本棚まで倒れました。
「あぁ…ストッパー付けて置けばよかった……」
この奇怪な現象より本が落ちて本棚が倒れたことのほうがショックなようです。
そんなに掃除もしていなかったので誇りが舞います。
「げほっ、げほっ、すごい埃…」
窓を開けて換気。
窓を開けて換気扇を付けると声が掛かります。
「おい、そこの君」
「はひっ!?な、なんですか誰ですか?」
倒れた本棚のほうからです。
急いで振り返ると本棚の上に誰か居ました。
「私の名前はピカリ!あなたを駄目な人にするために来ました」
「……え?」
「私の名前はピカリ!あなたを駄目な人にするために来ました」
「なにそれ!?」
「だーかーらー、あなたを駄目な…」
「いや、それは分かったから、何でって聞いてるの」
「私は未来から来たのですが、あなたの子孫が私よりも成績いいからです」
「…は?」
「だから、私は未来から来て、あなたの子孫が私よりも……」
「ちょっと!?今未来って言ったの!?」
「そうです。わざわざ未来を変えるために来たのです。感謝しなさい」
駄目人間にされるのに感謝はしないだろう。
あなた本棚壊したし。
「で?具体的には何されるの?」
「私があなたの私生活を邪魔します」
「それだけ?」
「十分でしょう」
……まあ、それくらいなら大丈夫そうだな。
「じゃあ、僕は宿題の続きがあるから」
「では早速邪魔しますね」
一応本棚を元に戻し、本を端に寄せる。
そのあとにてけてけと背後まで来る。
「…………」
「…………」
何をされるのだろうとちょっとドキドキ。
「………」
「………」
「ねぇ」
「…なに?」
「これどう解くの?」
「ん?これはね、こうこう」
「ふむふむ」
少し難しめの所を教えてあげる。
「あ、じゃあじゃあこれは?」
「これはねぇ…て、何で教えてるんだよ僕」
「良いじゃん、教えてよ」
「やだよ。何か見返りがあるわけじゃなし」
「お礼ならするよ?」
「む…しかしなぁ」
「ちゃんとお礼するってば、邪魔できてしかも勉強できるなんて一石二鳥じゃない」
「…………やっぱ教えない」
「いやーン、教えてよー」
ドスンと背中にのしかかってくる。
「……ずいぶん貧相な胸だな」
「うっさーい!!」
「ぐぼっ!」
後頭部をグーで殴られた。
「人が気にしてることをっ!」
「後頭部をグーは止めろ…」
手で押さえてうずくまる。
「もう、何なんですかあなたは」
「お前こそ何なんだよ…」
「私はピカリって言ってあなたを駄目な…」
「しつこい!そんなことされたって僕の成績は落ちない!」
「な、何ぃ!?」
背後でピシャーン!と雷が鳴る。
「………じゃあ、どうすれば……」
「帰って大人しく勉強しなよ…」
「よ、よし!こうなったら私もあんたの学校に行く!」
「は!?」
「そして学校で邪魔してやるんだから!」
「どうやって…」
「ふふふ。そこは私、未来人だから」
なに!?何か秘密の道具とかあるのか!?
「すでに書類偽造して転入届出してあるんだから」
「………」
普通じゃないけど普通だった。
「今度の月曜日からあなたのクラスに転入するから」
「…知らないよ?」
「え、なにが?」
「だって、僕のクラスに来るんでしょ?」
「そうだよ」
「…あーあ」
「え?な、なに!?なんなの!?」
「んーん、なんでもない」
「何だよ!?教えてよっ!」
椅子の上でガクガクと揺さぶられる〜。
「ところでさ、どこに住むの?」
「………え?」
キョトン、としてこちらを見る。
「未来から来たわけでしょ?住む所とかあるわけ?」
まあ、学校のこともすでに済ましているから余裕シャクシャクで答えが返ってくると思ったのだが…。
「………し…」
「うん?」
プルプルと小刻みに震え、顔には汗が伝う。
「しまった……すっかり忘れてた…」
目を見開き、驚愕の事実に打ちひしがれる。
「それ一番駄目じゃん」
がっくりと膝を折る。
「…ふぅ、じゃあしょうがないよね、さっさと未来に帰って…」
「あそうだ、居候させてよ」
「…は?」
「そうだよ、居候すれば寝るまで邪魔できるし」
やめてー。
「で、でもほら。うちの親共働きでほとんど帰って来ないし」
「ああ、じゃあ料理とか私が作ってもいいよ」
「………お風呂とか覗くかもよ?」
「見るだけなら別に構わないよ?」
「………」
ぬぐぐ、強いな…。
「着替えとかも覗くかもしれないし…」
「あんた変態だな」
ぐはっ!?
違う!帰らせたくて言ってるだけで別にそんなことはしないよっ!
「まあ、冗談は置いといて…」
両手で物を横にどけるジェスチャー。
「私はどこに寝たらいい?」
「居候は決定ですか…」
「いいじゃん、こんな可愛い女の子と一つ屋根の下だよ?」
「……じゃあ、その一つ屋根の下、間違いが起こっても別に気にしないと?」
「だって、そんなことする人じゃないっしょ?」
「………くっ」
負けた……。
ピカリはニヤニヤ笑っている。
「…卑怯だぞ」
「全然、こんなのまだ序の口でしょう」
これ以上の事をする気か!?
「……じゃあ、もう一つ布団を用意するから。それなら良いんでしょ?」
「さっすが、話がわかるね」
いや、渋々ですけどね。
「じゃあ、もう寝ようか」
「早っ!?もう?まだ8時だよ!?」
「良いの、おやすみ」
机から離れてベッドにもぐりこむ。
「ねえ、早いよ〜。もっと交流を深めようよ〜」
「え〜…、なんで敵と仲良くならなきゃならないのさ」
「だって、一緒に暮らすんだよ?ギクシャクしてちゃ嫌でしょ?」
「僕は別に……」
「あ、さては恥ずかしいんだなっ!」
「…そんなんじゃないよ」
「じゃあなんなのよ」
ただ眠いだけなんだけどな…。
「むう、私まだ眠く無いんだけどなぁ…」
ぶちぶちと呟く。
ずぴゅーん、とテレビに電源が入りました。
その少し後にゲームのオープニングが聞こえてきて……。
「って、勝手にゲーム始めるなよっ!」
「えー、だって暇だし」
「お前倒した本棚に沢山本入ってただろ、それ読むとかさ、静かにしてよ!」
「……じゃあ、お風呂貸して」
「む、まあいいよ」
「ありがとー」
これで少しは静かに……。
「…なに?」
「お風呂は何処?」
「………」

つづく