荒野にバギーが1台走る。
まだ若く見える男が運転をする。
男の名前はデミス。
サイドカーに荷物を積みまくって走っている。
「・・・・・・」
空は快晴。雲はどこにも見当たらない。
「・・・・・・」
デミスは険しい顔でアクセルを踏む。
ずっと、雨が降っていないせいで水がそこをつきかけていた。
食料はあるので朝露を集め、しのいでいる。
「にゃん」
サイドカーの中に一匹の猫がいる。
まだ草が見えていたときに拾ってしまって以来、捨てられない。
あと少しの水はこの猫のためにとってある。
「・・・・・・ん?」
地平線の向こうに城壁らしきものが見える。
アクセルを踏み込み、スピードを上げる。
次第に大きくなり、はっきり見えるようになる。
それからすこしして城壁にたどり着く。
「はぁ、やっと・・・」
城壁横の詰め所に行く。
「すみません」
「・・・・・・はいはい」
少し遅れて返事が返ってくる。
「入国させてほしいんですが」
「あぁ、はいはい。いいですよ」
ごそごそとなにやらびっしり書かれた紙を出してきた。
「・・・何です?」
「この中から好きな仕事を選んでください。滞在中は仕事をすることで住むところなどを国から借りられます」
「そうですか」
渡された紙に目を移す。
「う〜・・・ん」
目移りするほどたくさんある。
労働からデスクワークまで。
「じゃ、これで」
デミスが選んだのは軍への入隊。
「では、こちらに必要事項を記入してください」
出された書類に目を通していく。
「・・・軍はすぐにやめられないんですか?」
「えぇ、軍の場合は一月単位ですんで」
「そうですか」
合意書にサインして門番に渡す。
「では入国してください」
低い駆動音と共に重い城門が開く。
「にゃぁ」
「お前を飼ってくれる人が見つかるまで滞在するか」
バギーに乗り中へ入る。
大きくてにぎやかな国だ。
「これならすぐ見つかるかな?」
言われたホテルに着き、一息つく。
今日は休んで明日から早速来てくれとのことだった。
夕方にはまだ早い。
「・・・物資調達に行くか」
「にゃー」
「お前は待っててな?」
ちょいちょい、と喉を撫でてやると、うれしそうに喉を鳴らす。
この国の通貨を持っていなかったので売れるものを売ることにした。
いろいろとあり、帰る頃には外はもうすっかり暗くなっていた。
夕飯を済ませ暇ができる。
「明日は早そうだから、もう寝るか。」
こしらえてあったベッドに横になる。
「ふう」

・・・・・・

「ではこれより巨人について説明をします」
朝早くに呼ばれて国の中央の建物にきている。
「巨人とは、機動兵器のことです」
「はぁ」
「軍に入るのですから、操作方法を覚えてもらいます」
「はい」
これからする事を言われ、移動する。
「あれが、巨人ですよ」
指差す所に巨大な機械がある。
「あれが巨人ですか?」
「ええ、そうです」
少し立ち止まり眺める。
「こちらです」
言われるままに行く。
「この中ですか?」
「これからその中でシミュレーションをしてもらいます」
コクピットに入れられる。
『それでは、シミュレーションを開始します。操作の仕方は・・・』
「知ってる。前に同じものに乗ったことがある」
『そう、ですか?ならすぐに開始します』
そう言うと、ハッチが閉まりモニターが起動する。
『今見えている目標を全機破壊してください』
エネミーと表示された機体が3機向かってくる。
「武装は・・・」
テスト用なのだろう、あまり良くなかった。
「実戦と違うところはありますか?」
『特に無いです。細かいところは違いますが』
「そうですか」
ライフルとブレード以外を外し機体を軽くする。
「敵は三機」
スラスターで敵の上空に飛び上がり、頭部を狙う。
ダンッ、ダンッ、ダンッ
二機は沈黙、残り一機はまだ動いている。
スラスターを切って降下し、落下の勢いで敵にブレードを振る。
「・・・こんなもんかな?」
ガコン、とハッチが開く。
「すごいですね!」
「はあ・・・すごいですか?。」
「はい・・・。これでテスト終了です。貴方ほどなら自分の巨人を持ってもらいます」
「自分の?貰えるんですか?」
「それなりに働いてもらえれば貰ってもらってもかまいませんよ」
「そうですか。じゃ、がんばります」
満足そうに頷き、巨人があるところを指差す。
「あちらでパーツを選んでください」
「はい」
パーツリストを貰い組むパーツを決める。
「・・・・・・・こんなもんかな?」
リストにチェックを入れて整備員に渡す。
「どのくらいかかりますか?」
「組んでチェックするだけですのでそんなにはかからないかと」
「わかりました」
「あとこれを」
金属の箱のようなものを渡される。
「シミュレーターのはまりそうなところに入れてください」
「はい。・・・なんですか?」
「まぁ、やればわかりますよ」
「はぁ・・・」
教えてくれないのですぐにやってみる。
「シミュレーター、使ってもいいですか?」
「いいですよ」
返事を聞いてからコクピットへ入る。
「えーと、どこかな?」
探すと箱が入りそうなくぼみがあった。
「こう、だな」
はめるとスピーカーから声が聞こえてくる。
「はじめまして。これからあなたをサポートさせてもらうAIです」
「・・・あ、さっきの箱はこれか」
「まず、パイロット登録をします」
色々と細かい質問がたくさんくる。
「最後に、名前を教えてください」
「俺はデミス」
「じゃ、これからよろしくデミス」
「よろしく。・・・君には名前とかあるの?」
「私ですか?」
「そう」
「型番ならありますよ?」
「なら、俺つけても良い?」
「つけてくれるんですか?」
「うん。その方がいろいろと良さそうだから」
「なら、おねがいします」
「何がいいかな」
ぶつぶつと口の中でつぶやく。
「・・・・・・ルイン、って言うのはどうかな?」
「デミスがつけてくれるならどんなのでも」
「じゃ、よろしくルイン」
「はい!・・・さっそくなんですが、対戦が申し込まれてます。受けますか?」
「でも、俺のはまだなんじゃないの?」
「データはありますからシミュレーションで対戦できます」
「なら、受けるよ」
「了解」
モニターが起動するとすでに一機いる。
『よし新人、勝負だ!』
その一言で通信は切れる。
「・・・挨拶とかなし?」
「後でいいじゃないですか」
「それもそうだ」
機体の調子を見る。
「うん、なかなか」
『こっちから行くぞ!』
まっすぐに突進してくる。
「重量四脚です。相手は至近距離型なので距離をとって戦うと有利です」
「うーん。」
左腕装備と右肩の装備を解除する。
「何をしてるんですか!?」
「いや相手は一機だし、軽いほうがいいだろ?」
「そうですけど」
「よし・・・」
スラスターで飛び上がる。
グレネードを三発続けて撃ち、ニ発命中する。
『くっ!』
いきなり砲撃を喰らい体制を崩す。
「敵が体制を崩しました」
「よし!」
ライフルを連射し接近する。
「とどめっ!」
接近すると、ライフルを腰にストックし、ブレードでコクピットを突き刺す。
『甘いっ!』
四脚をうまく使い、すんでのところで避けられ側面を取られる。
『取った!』
「っ!?」
すぐに距離をとるがチェインガンとマシンガンの掃射を喰らってしまう。
「くそ、油断した」
応戦しがら後退する。
「こっちもですけど、向こうもあと数発受けたら終わりです」
決め手となるグレネードはあとニ発。
「いけるか?」
スラスターを使い、でたらめに動いて接近する。
「いけます」
『近い!?』
グレネードでニ本、脚を吹き飛ばす。
『うっ!!』
支えを失い、倒れる。
「終わりだ」
動けない相手の背面からグレネードでコクピットを狙う。
『・・・クソッ、新人に負けた』
モニターにWINと表示される。
「初対戦で初勝利ですね!」
嬉そうな声で言う。
「うん」
モニターが消え、ハッチが開く。
「休憩にしますか?」
「そうする」
「了解」
処理が終わったのを確認してから箱を外してコクピットから出る。
対戦している間に出来た機体に箱を入れて休憩すると、観戦していた兵士が一人話しかけてきた。
「すごいですね!途中から見ていましたが、まだ僕あの人に勝ったこと無いんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。良かったらコーヒーでも?」
「いいですけど、名前はなんて?」
「おっと、申し遅れました。ヴァンダといいます」
「よろしくヴァンダ」
「よろしく、デミスさん」
「さんはいいよ」
「そうですか?」
「うん」
「じゃ、行きましょう」
「ああ」
『俺の名前はドル!一回勝ったからって調子に乗るなよー!?今度は絶対負けないからなー!!』
後ろから聞こえる声は、聞こえてないことにした。

・・・・・・・・・

「はい、コーヒー」
「ありがとう」
紙のカップを受け取る。
「さっきの凄かったです!どこかで使ったことあるんですか?」
「まあ、前に少し」
「少しですか?」
「うん、少し」
コーヒーを一口飲む。
「・・・にが・・・・・・・」
「砂糖足りませんでしたか?」
「うん」
「とってきます」
「ああいや、いいよ。・・・それより、君はここに来てどのくらいになるの?若そうだけど」
「はい、いま18歳でここに入って三ヶ月です」
「18歳か、まだまだこれからだよ。頑張ればきっと強くなるよ」
「はい、そうですよね!」
バッ、と立ち上がる。
「僕がんばりますっ」
「よし、頑張れ」
「はい!」
返事をして走って行ってしまう。
「3歳しか違わないんだけどな」
苦いコーヒーに砂糖を足して飲み干し、施設内の見学をする。
外から見たほど広くはなく、巨人を入れておく倉庫がでかいため数分で回って戻ってきてしまった。
「帰って良い・・・訳ないよな」
なんとなく、コクピットに入る。
「・・・・・・・・・」
ルインを起動する。
「こんにちは、デミス。休憩終わりですか?」
「いや、暇だからさ」
「なら、シミュレーションはどうですか?」
「そうだな、何もしないよりいいかもな」
「ミッション形式のと、対戦形式のがあります。どっちにしますか?」
「ミッションを」
「了解」
ハッチが閉まりモニターが起動する。
「内容は?」
「ある遺跡に武装勢力を発見。これを排除せよとの設定です」
「どのくらいの勢力?」
「テロリスト程度のものですが、リーダーが巨人に乗っています」
「そうか、・・・はじめてくれ」
「はい、はじめます」
モニターに景色が映る
古くて今にも崩れそうな入り口の前にきた。
「MTですけどステルス機もいます。気をつけてください」
「わかった」
崩れた遺跡の物陰に注意しながら進んでいく。
「エネルギー反応多数接近」
レーダーには何も映っていない。
「ステルス機ですね」
「もう来たのか」
陰に隠れて待ち伏せする。
「来ました」
こちらを探しているようだった。
「・・・・・・見えないわけじゃないな」
敵がいると思われるところには蜃気楼のようなもやがあった。
「よし!」
横にステップして陰から出て行く。
「ここか!?」
もやのかかったところをブレードで切る。
歪みが消え、撃破する。
「これなら!」
ほかも同じように攻撃していく。
「ほかには?」
目を凝らし探していると後ろから撃たれる。
「背後に二機います」
「後ろか!」
振り向いてゆがみを探す。
「・・・・・・そこかっ!」
ブレードを突き出す。
「あと一機!」
・・・・・・ダンッダンッ!
探していると横から攻撃され、装甲で銃弾がはじける。
「そっちか!?」
横を向き、ブレードを振る。
「付近の熱源、消えました」
「よし、次いくか」
慎重に、素早く移動する。
・・・・・・・・・・・・ダンッ!
通路の角から敵機体を狙い撃つ。
「敵、撃破を確認」
「残るのはここだけか?」
重そうな鉄の扉の前に立つ。
最後に敵リーダーを倒そうと扉の中に入ろうとする。
「あ、あれ?動かないぞ?」
扉が、ではなく機体が。
「対戦申し込みが入っています」
「動かないのはそのせい?」
「はい」
もうちょっとなんだけどなぁ、とつぶやく。
「・・・んー・・・・・・よし、受けよう」
「了解。モニターを切り替えます」
一度モニターがブラックアウトし、また表示される。
『こんにちは』
「・・・ヴァンダか?」
『はい』
ちょっと前に知り合ったヴァンダが対戦相手。
『あなたと戦って自分の実力を知ってもっと頑張りたいと思いまして・・・』
「つまり俺をものさしに使いたいの?」
『えーと・・・、はい』
「じゃ、行くよ?」
『はい!』
モニターの中で、行きます!と言うように機体が動く。
「相手は軽量か」
まずは様子見、とガトリングを乱射。
『とっ!』
数発被弾したが回避する。
今度はライフルを撃ちながら接近する。
『くっ、とっ』
少しあせったりもしているが半分以上回避する。
「ふむ、・・・なかなか」
回避はまあまあか?などと考えているとヴァンダの機体が落ちらに突進してくる。
見た所、右手のでかいマシンガンだけ。
「どんな攻撃が来るんだ?」
一応警戒して身構える。
『行きますよ!!』
密着してマシンガンを浴びせるのかと思い、背中のスラッグガンを構え撃つ。
当たったかと思ったがスラッグガンを撃つより少し速く横にステップをして回避される。
『貰いました!』
背中の補助ブースタとスラスターをフルに使い機体側面に肉薄される。
「っ!?」
構えていたマシンガンは腰にストックし、斬られる。
「警告、右腕部脱落、右腕部装備脱落、コア損傷」
「く、・・・こんな戦い方なんて想像しなかったな」
急いで距離をとりガトリングを掃射する。
ヴァンダはそれを左右に動きながら射軸をずらして回避する。
『これでどうです!』
こんどはガトリングを回避しようともせず突っ込んでくる。
突きを繰り出し、それを回避するとそのまま横に振り斬撃に替える。
「ぐ!?」
回避が間に合わず斬られる。
「警告、左腕部脱落、左腕部装備脱落、コアの被害拡大」
『とどめです!』
コクピットめがけ、突きを繰り出す。
「まだ・・・!!」
グレネードで突きを出そうとしている腕を吹き飛ばす。
『ぐあ!?』
衝撃で機体がよろめく。
「これで!」
続けて足の付け根にグレネードを叩き込む。
『うわっ!!』
至近距離での直撃に関節が吹き飛ぶ。
「敵機体大破。やりましたね」
『・・・負け、ですね』
ブツッ、とモニターが消えるとコクピットハッチが開く。
「おーい」
向かいで同じようにコクピットから降りてきたヴァンダがこちらに走ってくる。
「いや〜、さすがに強いですね」
「まぁ、ヴァンダも強かったよ」
「そうですか?」
もうちょっと武装を――などと話していると後ろからいきなり肩を掴まれる。
「おい!」
呼ばれたので振り向くとドルが立っている。
「あ、何?負けた人。」
「ドルだ!・・・まあいい。もう一度勝負だ!」
「もう一度?・・・まあ、いいで・・・」
ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!
「なんだ!?」
『敵襲!敵襲!出撃できるものは直ちに出撃しろ!』
「敵襲?どこからですかね」
「どこからだっていいさ、行くぞ」
「待て、俺との勝負は・・・」
「後だっていいでしょうに。行きますよ」
「・・・チッ」
三人それぞれ自分の機体に乗り込む。

・・・・・・・・・

「敵機を確認しました、三機です」
「こちらと同じか」
向かって切るのは三機。こちらも三機。
「ヴァンダ」
『はい』
「俺が援護する、敵を刻んでやれ」
『え!?で、でも・・・』
「何怖がってんだよ。大丈夫、俺が援護してるしヴァンダは自分が思ってるほど弱くないよ」
『・・・そうですか?』
「そうだよ」
『なら・・・、行きます!』
補助ブースタとスラスターで敵に急速接近する。 
接近するヴァンダを迎え撃とうとする敵機に向かってグレネードを打ち込む。
直撃はしないものの、接近信管によりすぐ近くで爆発する。
煙に向かってヴァンダが突撃する。
「・・・・・・・・」
数回閃光が見えて動きがなくなる。
「・・・・・・」
もうもうとした煙が晴れてゆく。
晴れた煙の後にいたのは四肢を切断され、コクピットが抉られた敵機とヴァンダの機体。
『や・・・、やりましたよ!?』
驚きとうれしさの交じりあった声で言う。
「喜ぶのは後にしてもう一人の援護に行こうか」
言い終わるのと同時にドルから通信が入る。
『おい、早く来い!一対ニじゃ敵わないぞ!』
切羽詰ったような声で言ってくる。
『行きましょう、デミスさん!』
「さんはいらないのに」

・・・・・・・・・

「くそっ!」
二対一では分が悪い。
「ヴァンダ!デミス!まだか!」
『待ってくださいもう少しですから』
ヴァンダが言い終わると同時に横から敵機に向かって砲弾が飛んでくる。
避け切れない敵機が中破する。
『待たせた、今から加勢する』
「遅いんだよ!」
戦況は三対二でこちらに傾く。
「一気に行くぞ!」
デミスは中破した敵機に、ヴァンダとドルは残りの一機へと向かう。
「敵は中破・・・」
ガトリングとライフルを連射しながら接近する。
必死に回避するが、接近しグレネードを喰らわせると爆発、炎上する。
「そっちはどうだ!」
『ドルさんは機体が損傷しているので僕が戦ってますけど・・・うわっ!』
「どうした!?」
『すみません、援護をお願いできますか?』
通信越しに激しい銃撃音とドルの声が聞こえる。
「わかった、すぐ行く」

・・・・・・・・・

こちらはマシンガンとブレードだけ。
対する相手はミサイルやライフル、長距離レールガンなど距離をあける武装できている。
ドルは機体にダメージを負っているので下がっている。
「分が悪いですね・・・」
さっきからマシンガンで牽制しながら接近しようと試みているがうまくいかない。
「せめてデミスさんが来るまで持たないと」
マシンガンで頑張るが三機の中でリーダーなのか、なかなかに巧い。
ライフルやレールガンも全てを確実に当てようとしてくる。
ミサイルの使いどころも巧く攻撃するどころかかわすことも難しい。
「デミスさんまだですか!?」
『後ちょっとだ』
通信したことで少し集中が薄れる。
「うあっ!」
そのほんの少しの乱れで被弾する。
レールガンの直撃を喰らい衝撃がコクピットに伝わる。
畳み掛けるようにミサイルを撃ってくる。
「くっ!」
ミサイルをマシンガンで撃ち落とすが撃ちもらしたミサイルがぶつかり爆発する。
トドメといわんばかりにレールガンを構えている。
撃たれる寸前デミスが到着しガトリングについたシールドで砲弾を弾き返す。
『大丈夫か!?』
「いえ、あんまり・・・」
さっきから警告音が鳴りっぱなしでまともに戦闘できなくなっていた。
『もう下がっていいぞ。こいつは俺がやる』
機体の腕を動かし下がれと指示する。
「・・・・・・お願いします」
どこか悔しそうな声でつぶやくように言うと引き返してゆく。
「・・・さて」
「相手はオースレンジ対応型、デミスに似ているね。」
「ああ・・・・・・」
相手と自分が動くのはほぼ同時だった。
敵機がミサイルを発射。
それをガトリングで撃ち落とす。
こちらはグレネードで応戦。
横に飛び退き、回避される。
間近での爆発でももろともしない。
「こいつは・・・・・・」
・・・・・・強い。
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
避ける、避ける、避ける、避ける。
敵機が狙って撃ってくる。
それを弾き、ライフルを撃つ。
敵機も全て掠るように避ける。
「・・・・・・?」
突然電池が切れたかのように動かなくなる。
なんだか知らないがチャンス!
と、グリップのスイッチを押す。
「・・・?」
かちり、かちり、と音がするだけで弾は出ない。
「弾切れみたいですね」
「そのようだな」
モニターの中、敵機から装備が外れていく。
「敵も弾切れだったみたいですね」
弾切れの装備を解除していく。
残った武装はブレードだけ。
敵が動き出す。
スラスターは使わずに、その足で走ってくる。
自分も敵機と同時に走り出す。
距離が縮まりタックルのようにぶつかり合う。
金属同士のぶつかる甲高い音と、被弾とは比べ物にならない衝撃。
しかし怯む事無くブレードを振ってくる。
相手が振り下ろすようなのに対してこちらは振り上げるように攻撃する。
こちらは左腕をなくしたが、あちらもコアを抉ってやった。
それでも相手は怯まない。
振り下ろした腕を続けて振り上げてくる。
それを後ろに跳躍し避ける。
着地と同時に敵機に向かってまた跳躍。
落下の勢いをブレードにのせて斬る。
腕でガードするがその腕を切り落とし、そのままコアも斬る。
敵機のコアに十文字の傷が出来る。
着地直後に衝撃が来る。
緩和できずに不覚にも倒れてしまう。
「くっ・・・!」
立ち上がるが直後に来た斬撃を残っている腕で防御する。
両腕がなくなった。
敵機はもう攻撃できなくなった、と思いゆっくりと、狙って腕を振り降ろす。
「っ!!」
ブレードが当たるより速く、スタスターを使った体当たりを喰らわせる。
強烈な一撃で、後ろへと倒れる。
すぐに起き上がろうとするがそれを許さない。
敵機の胴体、コアを脚部で押さえるように蹴りつける。
何度も。
何度も、何度も、何度も何度も何度も。
衝撃でパイロットを殺すような勢いで踏みつけ、蹴りつける。
敵機はもう動かなかった。
衝撃で気絶したのか、または死んだのか。
最後だといわんばかりに強く、コアを踏みつける。
バギン、と最後の衝撃に耐えられず、十字に切られたコアが潰れる。
「終わりましたね」
「・・・・・・・・・」
「帰りましょう」
「・・・・・・ああ」
動かなくなった敵機を残し、帰還する。

・・・・・・・・・

帰還してコクピットから降りるとヴァンダが駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?」
「うん、大丈夫」
「機体があんなですからすごく心配しましたよ。」
「でも、俺は大丈夫だよ」
元気元気、と動いてみせる。
「よかった」

・・・・・・・・・

そのあとは一ヶ月あまり大きなことは起きずに過ぎた。
この国での滞在は軍なら一ヶ月区切りだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「どうしました?」
ヴァンダが心配そうな声で話しかけてくる。
「ああ、まだ滞在しようか考えてるんだ」
「まだするんですか?」
「出ようと思うんだけど、ちょっとね」
ネコがなぁ、とつぶやく。
「ネコが、どうしました?」
「今俺ん所にいるんだけど、連れて行けないから引き取り手が見つかるまでいようかと思うんだ」
「誰かが引き取れば行くんですか?」
「うん」
「なら、僕が引き取りましょうか?」
「え・・・いいの?」
「デミスさんのお願いならお安い御用ですよ?」
「・・・じゃあ、お願いしようか」

・・・・・・・・・

出ることに決めて荷物をまとめる。
必要なものはその国その国で調達するのでそんなに多くはない。
もともとバギーに載るだけの少ない荷物だ。
「・・・よし」
荷物をバギーに載せ、この国の門までいく。
程なくしてついた門にはヴァンダが立っていた。
「おはようございますデミスさん」
「おはよう」
はい、とネコを渡す。
「ありがとうございます。可愛いですね」
「それじゃ、もう行くぞ」
「あっ、ちょっと待ってください」
「?」
「僕からもお渡しするものがあります」

・・・・・・・・・

渡すものがあるから来てくれと言われて来たのは国の中央の建物。
もう通いなれたところだ。
「これですよ」
ヴァンダが指差したのは俺のだった機体。
「これ、デミスさんもらえることになったんですよ」
「これを?」
「はい」
踵を返し出口に向かう。
「ど、どこいくんですか?」
「バギー、売ってくる」
本当にバギーを売ってまた門のところまでいく。
「それじゃ」
「はい、気をつけてくださいね」
「うん」
コクピットのハッチを閉じて国の外に出る。
「これからもよろしく、デミス」
「ああ」
次の国までバギーよりは早そうだ。