「‥‥‥雨ね」
「雨ですね」
窓の外はどしゃ降りの雨。
まだ昼間のはずだけれど、夕方か夜のように暗い。
「‥‥こんな雨の日は、憂鬱だわ」
ふ、とため息をつく。
「‥‥紅茶でも飲みますか?」
「そうね‥‥頂くわ」
「では、淹れてきます」
一礼し、部屋から去っていく。
「‥‥‥ふう」
ため息ばかりが出てしまう。
こんな日は思ってしまう。
自分は夜の帝王なのだ。
なのに何故自然現象の、しかも雨などに行動を制限されなければならないのだ。
なんでこんなに弱点が多いのだ。
「…ふぅ」
本日三度目かのため息。
「失礼します」
咲夜が戻ってきた。
「あら、早いわね」
「退屈そうなので、少しばかり時間を止めていました」
にこり、と微笑。
「そう、ありがとう」
ポットからティーカップへ、熱い、紅い液が注がれる。
「…いい香りね」
目を伏せて、背もたれへともたれ掛かる。
「ミルクと砂糖はどうしますか?」
「…ミルクだけ入れて頂戴」
「はい」
赤に白が混ざり合う。
「…………」
カップを持ち、口元へ運ぶ。
小さく一口。
コクリ、と喉を鳴らす。
「ふぅ…」
「いかがでしょうか?」
「美味しいわ」
にこり、と微笑む。
「やっぱり、咲夜の淹れてくれる紅茶は美味しいわね」
「レミリアお嬢様の為、頑張っていますから」
「ふふ…ありがとう」
雨の日の、憂鬱な一日のちょっとした二人の楽しみ。
紅い館の主人とその従者の、ちょっとのんびりした時間。
まったりとした時間をのんびりと過ごす。


END