『今回のミッションはBFF社の輸送船団の撃破です』
ディスプレイに輸送船が映し出され、画像が明滅する。
『目標は6機、護衛もいるはずです』
「時間は?」
『0200(午前二時)に奇襲します』
「ふむ……」
『今回のミッションはライフルを装備する事をお勧めします』
「……そうだな、マシンガンじゃ、威力に欠けるな」
『では、すぐに作業に入ります』
「ああ、たのむ」
プツッ、と通信が切れる。
「さて、俺も準備するか…」
ディスプレイから離れ、鏡を見る。
「…よし、状態良好」
ロッカーへ向かい、パイロットスーツに着替える。
ピッタリと体にフィットするスーツ。
それでいて動きずらくないので気に入っている。
着替えが終わったところへ通信が入る。
『作業、終わりました。そちらはどうですか?』
「こちらもOKだ、今行く」
ドックへと続くリフトに乗る。
「………」
今回のミッションは6機の輸送船の襲撃。
BFF社の事だ、いっぺんにこんなにいるって事は、護衛にそれなりの自信があるのだろう。
したがって、NEXTがいる確率は高い。
リフトが到着すると、オペレーターが待っていた。
「おはようございます」
「ああ…こんなに早くから、ご苦労様」
「いいえ、お互い様ですよ」
「そうか?」
「ええ」
少し、やつれた笑みを見せる。
「目標の護衛の規模がわかりました」
クリップから資料を出しす。
「戦闘ヘリはもちろんですが、ノーマルが数十機、それとNEXTが2機です」
「2機も?」
「はい、ヘリックスT、ヘリックスUです」
「…姉弟のリンクスか」
「はい。なのでこちらも2機で出撃する事になりました」
「ん、他にもう一機来るのか?」
「はい、『彼』です」
「へぇ、一緒に来てくれるのか?」
「はい」
「それは心強いな」
「そうですね」
自分の機体の向こう側、傷だらけの機体が整備されている。
アナトリアの1リンクスの機体。
もう搭乗しているらしく、カメラアイに光がともっている。
「…よし、出撃する」
「はい……気をつけて」


『作戦領域に到達』
輸送機のハッチが開く。
『投下』
機体が放され、落ちる。 
独特の浮遊感。
数秒の後、着水。
『この先、5kmに目標がいます』
「了解」
『彼』は空中へ、自分は水面上をブースト移動する。
『へリックスT、へリックスUは連携した攻撃を得意とします』
「……つまり?」
『2機を離して戦闘すれば、勝機はあるはずです』
「それに、『彼』がいる。負けはしないだろう」
『そうですね………見えてきました』
「ああ…」
オペレーターとの通信を切る。
と、今度は違うところから通信が入る。
『お互い、やられないように頑張ろう』
「ああ…わかってるさ」
『期待している』
それだけで通信は切れる。
まだ肉眼では見えない。
水平線上が一瞬光る。
『っ!!避けろ!!』
「っ!」
反射的にクイックブーストで横へ逃げる。
瞬間、まばゆい閃光がほとばしる。
「あぶねぇ……コジマキャノンか」
『また来る、気をつけろ!』
クイックブーストを使っての回避行動。
かなりの精度でプラズマキャノン、コジマキャノンが狙ってくる。
「くそ、これはへリックスUか」
『奴等、近づかせないつもりか…』
「そうは行くか…!」
オーバードブースト。
マッハを超えるスピードで一気に接近し、へリックスUを発見する。
『俺はへリックスTをやろう』
「了解、俺はこのままへリックスUをやる」
そう言うと『彼』は輸送船のほうへと向かう。
「さて、反撃だ…!」
背中にはグレネード。
両手にはライフル『AZAN』。
至近距離船が想定され、速射性に優れた突撃ライフル。
他のライフルでは弾幕性に欠けるため、このライフルにしたが精度、威力共にライフルの中では最低ランクにある。
それをマシンガンのように相手に向かって撃ちまくる。
「そらそら…お!?」
コジマキャノンが直撃する。
コジマキャノンは特にPAへのダメージが酷い。
貫通力も高いため、要注意だ。
「早めに決着つけないと、長引いたら負けだな」
グレネードを構える。
片手でライフルを撃ちながらグレネードを撃つ。
ドンッ!
「…ちっ」
回避された。
しかし、ライフルのダメージは蓄積されているはず。
「このまま…」
何も無い暗い海の上、クイックブーストで急接近する。
「っ!」
ドンッ!
至近距離でのグレネード。
直撃し、爆炎があたりを明るく照らす。
しかし、四脚は安定性が高い。
へリックスUは爆炎の中から反撃してくる。
「くっ!アーマーが…!?」
至近距離でのコジマキャノンの直撃。
PAが消滅し、チャ−ジ状態となる。
ドンッ!
グレネード発射。
爆発の衝撃を利用し、急速後退する。
「これは、やばい!」
ライフルを撃ちながら距離をとる。
相手からの攻撃がキャノンからライフルへと変わる。
キャノンは強力だが、その代わり装弾数が少ない。
「キャノンが無いなら、機動力の勝るこっちの方が…!」
ライフルを乱射し、クイックブーストの連続使用で相手をかくらんする。
『ジーン、下がって』
『でも姉さん、このままじゃ…』
へリックスT、へリックスUの会話が聞こえてくる。
「……………」
『…情けをかけるな、死ぬぞ』
「わ…わかってる!」
まるで心を見透かされたかのような指摘。
それを否定するかのように畳み掛ける。
『ジーン、逃げて…!』
「……くっ!」
ライフル弾が機体に食い込む。
ライフル弾を機体に食い込ませる。
「…くそ……!」
オーバードブースト。
へリックスUとの距離を一気に縮め、クイックブーストで相手の側面へと回りこむ。
『しまっ…!』
ドンッ!
側面、超至近距離でのグレネード。
ライフルごと、腕を吹き飛ばす。
「……さよならだ」
ライフルの銃口がコアへと向く。
ゼロ距離で、数多ものライフル弾がコアへと叩き込まれる。
『……姉、さん………』
カメラアイの明かりが消える。
ジェネレータの出力が落ち、機体が海へと沈んでいく。
『ジーン!ジーン!!』
弟を呼ぶ声が警告音と共に聞こえる。
『くっ………ジー、ン…』
やがて、もう一機のNEXTの反応も消える。
「……くそ」
そのあとに6機いる輸送船を破壊する。


ブシュゥゥ。
高圧ロックが解除され、コクピットが開く。
「…お疲れ様」
「ああ…」
「検査は…」
少しだけ微笑む。
「要らないですか?」
「…ああ」
今はもう休みたい。
「もうしばらくミッションは無いので、ゆっくり休んでください」
「ああ、そうさせてもらう」
彼女なりの気配りなのだろう。
それ以外は見送っただけで何も言わなかった。



END